自筆証書遺言は、公正証書遺言や秘密証書遺言などと違い、紙と筆記具と印鑑さえあれば、遺言者の好きな時に作成することができます。
この自筆証書遺言で使用する用紙や筆記具、印鑑には、「これを使わないといけない」という法律上の規定があるのか?
注意点なども含めて説明していきます。
自筆証書遺言の作成を考えている方の参考になれば幸いです。
自筆証書遺言で使用する用紙
まずは、自筆証書遺言で使用する「用紙」ですが、法律上の規定はありません。
紙質やサイズも、遺言者の好きなものを使用することができます。
なので、コピー用紙、便箋、和紙、メモ帳、ルーズリーフなど、どれを使用しても有効に遺言書を作成することができます。
品質のいい紙を使う
法律上はどの用紙を使用しても問題ないですが、できる限り品質の良い紙を使うことをおすすめします。
遺言書は、亡くなってから使用することになりますが、基本的にそれがいつになるか分かりません。なので、長期保存に耐えられる品質の良い紙を使っておいたほうが無難です。
現在、販売されているような用紙は、どれを使っても問題はないとは思いますが、昔の紙は日光や虫に弱い紙でした。そういった紙は遺言書には向きません。
コピーしやすいサイズで作る
先ほども言いましたが、遺言書で使用する紙は「サイズ」についても規定がありません。
A2サイズの大きな紙に遺言書を書いても有効です。
しかし、遺言書は写しをとる場合があるので、コピーしやすいサイズで作っておいたほうが便利です。
おすすめのサイズは「A4」または「B5」です。
自筆証書遺言で使用する筆記具

自筆証書遺言で使用する「筆記具」についても、法律上の規定はないです。
油性、水性どのインクを使っても大丈夫ですし、色についても規定がないので赤や青のインクで遺言書を作成しても有効です。
ボールペン、万年筆、筆、鉛筆など、自分の書きやすいものを選択できます。
カーボン用紙でも問題ありません。
ただ、私はお客さんに対しては、黒いボールペンや万年筆で書くことをおすすめしています。その理由は次の通り。
改ざんの恐れがある
鉛筆など消しゴムで消して書き直せるものは、遺言書では使わないほうがいいです。
理由は「改ざん」される恐れがあるからです。
遺言者の死後、相続人が遺言書を発見。
その相続人に不都合な記載があった場合、改ざんされる可能性があります。
不都合な部分を消しゴムで消したり、筆跡を似せて文章を書き加えたり、場合によっては筆跡鑑定が必要になるなど面倒なことになる可能性があります。
自筆証書遺言で使用する印鑑
遺言書は「実印」じゃないとダメと思っている人が多いですが、認印、三文判などで押印しても有効な遺言書を作成できます。
実印を押さなければ無効になるなどの規定は存在しません。
拇印でも大丈夫です。
ちなみに私は、上記の内容を説明をしたうえで、お客さんには「実印」での押印をすすめています。遺言書という性質上、実印が最適だと思うからです。
シャチハタによる押印について
「どの印鑑を使ってもいい」とは言っても、シャチハタはやめたほうがいいです。
「シャチハタで押印した遺言書は無効になる」という法律上の規定はないですが、シャチハタのインクは長期保存に向いていません。
印影が薄くなるなどの問題が起こると言われています。
自筆証書遺言は押印がないと無効になります。必要な時に認識できないほど印影が薄くなっていると、それをキッカケに何らかの争いが起こる可能性があります。