行政書士は行政書士会に登録することで、初めて行政書士と名乗ることができ、依頼人から報酬をもらって業務をすることができます。
なので、登録についてのこんな疑問が生まれます。
行政書士試験に合格したんだけど、登録しないといけないの?食べていけない資格って言われているけど登録しない方がいい?
私は、行政書士開業4年目です。そんな私でも試験合格直後は、登録についてそんな疑問をもっていました。今回は行政書士の「登録をしない場合のデメリット」や「登録しないとどうなるのか」について解説していきます。
行政書士試験合格後「登録しない」ことも可能
行政書士の国家試験は一度合格すれば一生有効です。
なので、登録しなかったからといって合格が取り消されたり、再試験が必要だったりというような不利益はありません。登録するもしないも合格者の自由です。
実際のところ、登録する人よりも登録しない人のほうが多いのが現実です。行政書士業界が盛り上がって欲しいと思っている私としては残念です。
試験に合格しても行政書士登録しない理由
理由としては次の3つが多いです。
- 高い登録料
- 実務の未経験
- 業界への不安
高い登録料
所属する都道府県の行政書士会にもよりますが、入会金や登録免許税や手数料などで、だいたい最初に20~30万円ほどかかります。そして入会後も月会費や政治連盟の会費で年間6~8万ほど払い続けます。高いです。
でも、これを支払わないと行政書士のスタート地点にも立てないのです。登録するのに、お金がかかるからと放置する人が多くなります。
安くなるのか?もちろん安くなりません。登録すると開業することにもなるので、事務所の設備や運営資金なども、別に必要になります。
とてつもない勢いでお金が消えていきます。気軽に登録できるものではありません。登録しない人の気持ちも分かります。
実務の未経験
先ほども書きましたが、行政書士の登録は、そのまま開業にもなります。具体的には税務署に開業届けを提出して業務スタートです。
そこで不安となるのは実務経験がないこと。
行政書士の試験って、実務の知識とかけ離れた内容なんですよね。
なので、試験に合格する知識はあっても、実務を処理できる知識はありません。そのあたりの不安が登録をためらう一因となっています。
さらに、行政書士には「依頼に応じる義務」があります。
正当な理由がないと依頼を断れないのです。正当な理由というと、病気やケガ、犯罪がらみを理由として断るといったところでしょうか。
実務経験がないから依頼を受けるのが不安なのに、正当な理由がないと依頼を断れないって、結構キツいですよね。というか、怖いです。そりゃ、みんな登録しなくなりますよね。
業界への不安
ネットで検索とすると分かりますが、「行政書士は食えない」、「行政書士は3年以内に9割廃業する」など、不安なことしか出てきません。
実際は、行政書士専業でも稼いでいる人は多いのですが、登録前にはそんなことは分かりませんから登録しなくなります。
ちなみに、行政書士の廃業率は高いですが、やり方しだいでは十分に稼ぐことは可能です。
そもそも使う予定がない
行政書士登録をしない方の中には、そもそも行政書士の資格を使う予定のない方も多くいます。
例えば下記のような方たちです。
就職活動をする際のアピール
リストラされた時の保険として
難易度の高い法律系国家資格に挑戦する腕試し
自己啓発のため
こういった方々は、合格から数年経って登録する場合もあれば、そのまま一生登録しない場合もあります。登録しないと、どうなるということもないので自由です。
行政書士登録しないデメリット
開業4年目の私からすると、試験に合格して、将来行政書士として開業することを考えているなら、早く登録した方がお得です。
行政書士として登録しないと、行政書士と名乗れない、仕事ができないというデメリットのほか、行政書士会からの情報が入ってこない、人脈が作れないなどのデメリットもあります。
行政書士と名乗れない、仕事ができない
行政書士試験合格を知った友達から頼まれても、行政書士の仕事はやってはダメです。それどころか、行政書士と名乗ってもダメです。
そんなことをしたら、行政書士になる前に行政書士法違反になります。
行政書士会からの情報が入ってこない、人脈が作れない
行政書士会に登録すると、法律や制度の改正などの実務研修が行われるので、様々な情報が入ってくるようになります。マニュアル的なテキストをもらえることもあります。
ビジネスチャンスにもつながるので、それらを知るだけでも登録する価値あります。
合格から登録までが遠くなるほど、試験勉強した法律も変わってくるので、だんだん浦島太郎みたいになってきます。開業後に、その情報の差は利益の差になります。
また、人脈を作れないのもマイナスです。
早く登録するほど人脈は増やせますし、知り合ってからの期間や関係が深くなるほど仕事への影響が大きくなります。
失敗しない登録・開業について
どこかに就職しつつ行政書士として登録、副業として開業するのが一番失敗のない方法です。なにより収入を確保しているので生活に困らないのが魅力。
自分のペースで、ゆっくりと実務経験を積むこともできますからね。そして、行政書士としての収入が安定してきたら、会社を辞める。完璧です。
補助者として
収入が低くなりますが、補助者として行政書士事務所で働くことができれば、収入と実務経験の両方が手に入るので、開業後の不安がまったく無くなります。
ただ、募集が少ないです。
都心部以外は離れるほど絶望的です。
行政書士は、実務経験がなくても開業して成功もできますが、ないよりは、絶対にあったほうがいいです。
あわてて登録する必要はない
とはいえ、あわてて登録する必要はありません。
行政書士の登録・開業は、その後の人生を左右する大きな選択です。
後悔しないように、じっくりと考えてからにしましょう。
事務所の場所や取扱業務、軌道に乗るまでの生活費などについても、しっかり考える必要がありますからね。たまに計画を立てないで勢いで開業する人もいますが、しっかりと計画を立てたほうが成功率も高くなります。
まとめ
行政書士は試験に合格しても、登録しないで大丈夫です。
国家試験に一度合格すれば、合格自体は一生有効です。
ただ、登録しないと、行政書士として名乗れないし、仕事もできないし、行政書士会から法律や制度の改正情報も入ってことないし、人脈も作れないというデメリットがあります。
行政書士は副業でも大丈夫なので、早めに登録や開業したほうがいいです。